鹿児島に帰りたい

2013年06月12日

同僚の先生に、同年代の日本人女性で
アメリカに移住してきて、まだ4年という方がいる。

20代、30代という時間を、日本国内で日本語講師として過ごしてきた方だ。

その人と先日おしゃべりをしていて
日本の社会で、社会人として機能してゆくためには何が不可欠か

つまり

日本の職場ではどういったことで揉めるのか、それにはどう対処するべきなのか、
加えて自分にとって働き易い環境を作り上げてゆくには、どういった人とどういうふうに付き合って、何を(特に女性として)言ってはいけないのか、してはいけないのか...等々のお話を伺った。

聞いていて

非常に、興味深く


そしておそらく自分は もう日本という社会では上手く機能しないだろうなという
漠然とした淋しさも覚えた。







アメリカ人の夫には いつも

「君は、骨の髄までめちゃめちゃ日本人」 と言われ

「そのままでいい、変わることはない。アメリカ人になることはない。日本人でいなさい」 と言ってもらい、

私も日本人を辞める気はさらさらないので、在米20年経った今でも市民権すら取得していないという有様で (なのでこんなに税金を払っているのも関わらず、私には選挙権が無い)

今でも日本のパスポートを持ち、日本人として日本に入国する。



でも、たまに日本に帰ると
なんというか、自分が浮いてるなあ〜と感じることがある。


それもそのはず、私の中の日本人は20年前のままで止まっていて
その間、母国は
人もふくめ、言葉もふくめ、慣習もふくめ、様々な面で変化してきたのである。

そこに暮らしていなかった私は、その変化と共に生きてこなかったのである。



アメリカに何年暮らそうと、もちろん「アメリカ人」になどなれず
日本に帰っても、なんとなく「そこにそぐわない感」のある自分。

そんな宙ぶらりんな感覚を味わうようになったのは、在米10年を過ぎた頃からだろうか。


今でもよく覚えているのは、ちょうどその頃(2003年ごろ)
帰国して大阪でタクシーに乗ったとき
運転手さんと普通に楽しくおしゃべりしていて(少なくとも私はそのつもりでいて)

降りるときになって

「お客さん、もしかして海外に住んでる人?」 と言われたことがあったこと。

(会話の中では「出身は鹿児島です」としか、言ってなかったのだが)


えっ、何でですか??? と驚いて聞いたら

ん〜、なんとなく雰囲気からそうかなあと思って...、とだけ。


雰囲気......



そう、この「雰囲気から」というのが、ミソなのだ。


たぶん自分では気付かないうちに、運転手さんとのおしゃべりの最中に
私がなにかズケズケとした物言いをしたか、配慮の足りないことをしたか
全くとんちんかんなことを口にしたか...

いずれにせよ、何かしでかしたのだと思う。

(今でも何をしでかしたのか、全く分かっていない)





自分ではコントロールできない、この「雰囲気」というやつ。


これは、そこに住む者同士が
日々同じ空気を吸い、その時市場に出回っている同じものを食べ
テレビで同じニュースを見て
同じ話題で言葉を交わし、盛り上がったり、はたまた心を痛めたり、、、
そうやって「その時」を共にすることで、自然と培われるものなのだと思う。

なのでそうした時間を共有しなかった者には、どうしたって醸し出せない「空気」みたいなものなのだと思う。


そうした「時間」を20年もの長いあいだ共有してこなかった私は、
完全なるアウトサイダー(外れ者)である。





それでも 故郷に 帰りたい。



家族が元気でいてくれている間は、どうしたって帰りたい。


そろそろ日本に居た年数より、アメリカにいる年数のほうが長くなりつつある私だが
それでも日本は自分のルーツなのである。
帰ると、つながってホッとする。

シアトルにいると殆ど話すことのない「かごんま弁」が
鹿児島空港に降り立った途端、スラスラと口から滑るように出て来る。
数年しゃべっていなくても、まるで昨日までしゃべっていたかのように出てくる。

そんな自分とつながると、理屈抜きに 嬉しい。

そして、「ああ、まだいたか...」と安堵する。


ちょっと考えてみる。これが逆のケースだったら? 
例えば英語を数年話さない状況にあった自分がアメリカに戻るとする。
戻った時点で「すぐにスラスラ〜」といくだろうか? いかないと思うのだ。


それほど、母語というのは
自分の中に根深く生き続けている。







この夏は、是が非でも帰りたい。


そう強く思った時点(2月)で、既に大学の夏のスケジュールまで決まってしまっていたため(夏期講習を教えることになっていた)
帰国はどうやら9月ごろまで叶いそうにないのだが
どうにかして帰ろうと思っている。

夫はその頃はどうしてもバケーションが取れないので、今回は一人で帰らざるを得ないが

「行っておいで」と言ってくれるその言葉に甘えて、一人きりで帰省させてもらおうと思っている。


「クレイジー」だった今学期もやっと終わりが見えてきて、ようやく綿密な計画にとりかかる時間的余裕ができてきたところだ。






日本でドラマ制作のお仕事に携わっているお友達、floorさんが
ご自身の関わった作品 母。わが子へ というドラマのDVDを先日わざわざ送ってきて下さった。

母親と息子がテーマの作品。
親としての視点から、そして子供としての視点から
どちらの立場からも「だから家族なんだよ」を温かく教えてくれるような、心に深く残る作品だった。


ドラマの中で母親役だった八千草薫さんの、こういうセリフがあった。


故郷ってね、人なのよ。



そう、会いたい人がいるところが、ふるさと。

会いたい人がいるから、帰ろうと思う。


何となく浮いてるんだなあ〜と感じても、帰りたいと思う。




今から何十年もの時間が経って、そうした人たちがみんな居なくなってしまったら


ふるさとに帰る理由は、なくなってしまうかもしれない。
もう帰れなくなってしまうかもしれない。


会いに帰りたいと思う人が、
まだ生きてこの世にいてくれている。


そのことを、決して「当たり前」とは思うまい。



まだこの世にいてくれている。


だから、帰ろう。

会いに帰ろう。






同じカテゴリー(ふるさと)の記事画像
さよなら鹿児島、ただいまシアトル
ここにいる自分
日本からシアトルまで
日本の家族の思いやり
帰省 2011  ... 灰のふる日
帰郷 2011 ... ラーメン
同じカテゴリー(ふるさと)の記事
 さよなら鹿児島、ただいまシアトル (2013-09-21 00:15)
 ここにいる自分 (2013-09-15 00:47)
 いてくれてありがとう (2013-02-08 17:41)
 日本からシアトルまで (2012-07-17 12:14)
 日本の家族の思いやり (2011-12-30 18:29)
 帰省 2011 ... 灰のふる日 (2011-11-04 12:10)

Posted by レニア at 15:44│Comments(16)ふるさと

この記事へのコメント

帰っておいで。
待ってるよ〜〜(´ー`)/
Posted by 有紀 at 2013年06月12日 15:53
有紀ちゃん、

ありがとう。日程が決まったら真っ先に知らせるね。
一晩でいいので、飲みにつき合っておくれ〜。
Posted by レニアレニア at 2013年06月12日 16:51
先日NYに住んでいるいとこが来鹿。
母親は鹿児島生まれですがいとこは東京生まれ
会ったのは30年ぶり以上。
一人息子が29歳と言っていたのでアメリカ在住30年以上かも。
それなりに年は重ねておりましたが面影は変わりなく言葉も
普通に標準語。今の平板化した標準語ではなく私たちが子供の時に
使っていた標準語でした。
しぐさも何もえぇ~。って思うぐらい普通でしたよ。
ずっと東京で過ごしていた人みたいに。
地元に戻るとくるって変われるのでしょうね。
うふふもいとこと話すと標準語です。くるっと変わりました。
どちらも故郷ですよね。
9月は、まだ暑いですから鹿児島を満喫できますね。
Posted by うふふうふふ at 2013年06月12日 19:22
「君がいるところがMy sweet home」 ですね(^^)/
 愛する人の住むところが、どこだろうが故郷さ~♪

浜田省吾さん、12年ぶりテレビ出演されるとのことで
朝から、浜友さん達と盛り上がっていたんですよ。

20年…。すっかり日本は、変わってしまったのかもしれません。
真面目にコツコツ、努力していたら、報われる。
そんな時代では、なくなったかもしれません。

「母。わが子へ」 私も見てみたいと思います。
そうそう、次男が最近 「佐渡島」へ行ってきた時に
フェリーの中で 「わが母の記」って映画を観たって言ってました。
 口数の少ない息子が、私にそれを話すことは
 自分の中で、何か思うことがあったのでしょう。

私は、以前ここでもどなたかがコメントされていましたが
今年放送されたドラマ「とんび」が一押しです。
これは、父と息子の物語ですね。


うちも、妹が10月に帰ってくると連絡がありました。
私から見てもね、
妹は「海外に住んでる人?」の雰囲気ありありです(笑)
 何事もポジティブ! 知らない人にも友好的!
 服装、気にしない! 化粧もせずに自然体!
そんな感じです…
 レニアさんは、どうですか?
Posted by shanti at 2013年06月12日 21:59
久しぶりの帰省、楽しみですね♪
ご家族やお友達とゆっくりのんびり羽を伸ばして、素敵なリフレッシュ休暇になることを願ってます。

成田―鹿児島間もLCC(ジェットスター)が就航したので、国内線も5千円台~チケットあるのでとても便利ですよ^^

もしお時間の都合がつけば、ぜひお会いしたいです~(*´∀`人)
Posted by hanon at 2013年06月13日 10:06
インディアナから引っ越してきて、シアトル1ヶ月目のみみーと申します。
いつも楽しみに拝見しています。
私も鹿児島出身です。
アメリカ人の夫も鹿児島大好きです。
ちゃわん蒸しの歌とか、口ずさんでしまいます。私も今年の年末か来年には3年ぶりに帰省したいです。これからも応援しています。
Posted by みみー at 2013年06月17日 14:32
うふふさん、

お久しぶりです。いとこさんと30年ぶり以上の再会!きっと積もる話に花が咲いたことでしょう。N.Y.からだと日本に帰るだけでもかなり遠いのに、鹿児島まで足を伸ばしてくれるなんて嬉しいですね。
そしてしぐさも何もずっと今まで東京に住んでた人みたいに普通だったということ。何だか私が嬉しくなりました。
人間変わってしまう部分と、どうしたって変わらない部分とがあるのでしょうね。

話す相手によってくるりと変わる言葉。
つくづく言葉って、相手あってのものなんだなあ〜と思います。私もいきなり一人で鹿児島弁しゃべってと言われても上手くしゃべれませんもの。。。
うふふさんもバイリンガルですね。(^^)
Posted by レニアレニア at 2013年06月17日 16:45
shantiさん、

浜省さん、12年ぶりのテレビ出演!! 見たい。。。どの番組でしょう?レンタル屋さんに来るかなあ。
「とんび」前にどなたかがコメント残して下さってから私もずーっと気になってました。でもドラマ見る余裕がなかったので、夏に入ったら是非見てみたいと思います。

次男さんはその映画を見て、自分のお母さんと重ねて色々と染み入る部分があったのでしょう。。。男の子って本当に自分の気持ちを言葉で表現しませんよね。だから次男さんがその映画のことをshantiさんに話したということは、言葉で表面に浮上しているその何倍もの思いが内側でぐるぐるしていたのかもしれませんね。

妹さんもこの秋帰国されるんですね!
私は...「何事もポジティブ!」のところだけ妹さんと違って、あとは似てるかも (^^;)
久しぶりの妹さんとの時間、楽しみですね。
私も日本に帰って妹と、ビール飲みながら夜な夜なおしゃべりできる時間が今からとても楽しみです。
Posted by レニアレニア at 2013年06月17日 16:54
hanonさん、

そうなんです!実は帰国を決めてから色々調べていて、「成田ー鹿児島」の直行便があると発見して(しかも格安!)感動していたところでした。
LCCの参入で日本の国内線事情もずいぶん変わってきたんですねえ。。。
便数の少なさなどの制限はあるけれど、これで鹿児島への帰路がグンと短縮されたような気がして嬉しいです。

今回の帰省ではあちこち旅行したりせず、ずっと鹿児島にいるつもりなんです。なのでhanonさんがお仕事等でお忙しくなければ私も是非お会いしたいです!

今学期もようやく期末試験まで終了し、今かんづめ状態で採点してるところなんですがそれもやっと終わりが見えてきました。また帰省の詳細がわかったらお知らせしますね!
Posted by レニアレニア at 2013年06月17日 17:02
みみーさん、

初めまして。インディアナから越してらしたばかりなんですね。
いかがですかシアトルは?インディアナに比べたら日本食等も比較的手に入り易いのではないかな?
この土地に薩摩おごじょがまた一人増えたのだと知って、何だか嬉しくなりました。私も車運転しながら「茶碗むしのうた」がよく口をついてでます(笑)旦那さまも鹿児島を好いて下さってると聞いて益々嬉しいです。 (^^)
新しい土地での生活は不便も色々と感じることと思いますが、早く慣れるといいですね。温かいコメントありがとうございました。
Posted by レニアレニア at 2013年06月17日 17:10
再び こんにちは!
浜田省吾さんの番組
 7/28 午後10;50~深夜0:20

http://cgi2.nhk.or.jp/pr-movie/detail/index.cgi?id=09_0002

もし録画できれば、レニアさんにお送りしますよ。
Posted by shanti at 2013年06月19日 09:07
shantiさん、

番組情報をありがとうございます!
妹に録画を頼みました。8月下旬に帰国したときに見せてもらおうと思います。
shantiさんのお心遣いとっても嬉しかったです。ありがとうございます。(^^)
Posted by レニアレニア at 2013年06月19日 11:43
レニアさん

こんばんはぁ~、ご無沙汰しております。
お元気でいらっしゃいますか?
以前あなたのブログ『妻の祈り』を拝見して初めて
コメントさせて頂きました。
覚えてらっしゃいますか?
私も鹿児島県人です。(私は種子島出身ですが・・・・)
今回もたまたまあなたの記事を拝見して、
鹿児島へ帰りたい・・・・・ん~、是非ご帰還を。。。。
鹿児島の皆さんがお持ちだと思います。
そして、ご自分で浮いていると思われても、決して日本人として、鹿児島県人としの誇りは失わないでくださいませ。
日本人の誇りは、世界から見ても、素晴らしいものが
あると思います。
私も久しく種子島へ帰省しておりませんが、いつかまた
必ず父が生きている間に、帰ろうと思っています。
一番上の姉が鹿児島にいます。
すぐ上の姉は、福岡です。
私が一番遠く、大阪ですが、三人で揃って帰ろう、、、と、
計画中です。
自分が生まれ育った故郷は、心を絶対に裏切らないです。
私は、故郷って、、、そんな場所だと思っています。

レニアさんも、鹿児島へ帰られて、心豊かになって、
また御主人様のもとへ。。。。。。
Posted by tane at 2013年06月23日 23:11
taneさん、お久しぶりです。
私は山あり谷ありの毎日ですが何とかやっております。taneさんはお元気でいらっしゃいますか?

故郷に寄せる思慕は常にあるのですが今年に入ってからは特にふるさとを恋しく思うような事象が続いたので、帰りたいなあ〜という念がことさら強くなっているように思います。
そうなんです。taneさんのおっしゃるとおり、鹿児島に帰ることは燃料補給というか、ここではどうしても補給できない特殊エネルギーみたいなものを蓄える場所というか、そんな気がします。帰って充電するとと物事に立ち向かう意欲が沸いてくるというか、「よし、またがんばるぞ!」と気持ちを新たにアメリカに帰って来れる感じがします。

taneさんにとっても種子島はきっとそういう場所なのでしょうね。。。三姉妹でいらっしゃるのですね。姉妹っていいですよね。私も妹と二人姉妹ですが、何年会っていなくても会えば途端に繋がるというか、親しい女友達にさえ言えないような事でも妹にはさらりと話せたりします。不思議なものです。。。幼い頃はケンカばかりしていたのですが(笑)。
taneさんもお姉さんと三人揃って帰省されたらお父様はさぞ喜ばれることでしょう。近いうちに帰省出来るといいですね。
コメントありがとうございました。
Posted by レニアレニア at 2013年06月27日 14:47
通りすがりの者ですが、コメントさせていただきます。
私はこの7月 学校の語学研修で11日間シアトルに滞在しました。
たった11日間でも 日本が恋しくなって帰りたいと思ったのに、20年間…!!
20年も住むと 逆にシアトルに帰りたい、という気持ちになるのでしょうか。

これまでの記事も読ませていただいて、海外に住むことに対する憧れが大きくなりました。
ありがとうございます。
Posted by haru-- at 2013年08月13日 22:28
haru--さん、

先月シアトルにいらしてたんですね。学校はどちらだったのでしょう。私の勤める大学にも短期研修の日本人の学生さんがたくさん来ていました。シアトルでの滞在、楽しまれましたか。

そうですね、やはり今はシアトルに家があるので長く離れると「シアトルに帰りたい」というよりは「家に帰りたい」という気持ちになりますね。日本に里帰りして、それはもちろん懐かしいし居心地よいのですが、どうしても「旅行」という感覚が抜けません。自分の母国にいるのにヘンな話ですよね。

haru--さんにはまだまだこれから色んな選択肢がありそうですね。自分の適正を見極めて輝く未来を切り開いていってくださいね。コメントありがとうございました。
Posted by レニアレニア at 2013年08月14日 02:37
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
鹿児島に帰りたい
    コメント(16)