だっこのしゅくだい

2013年07月03日

「だっこのしゅくだい」


せんせいが、「きょうのしゅくだいは、だっこです。

おうちの人みんなにだっこしてもらってね」といいました。

ぼくもみんなも「ええーっ」とびっくりしました。

だって、だっこのしゅくだいなんて、はじめてだからです。

なんかはずかしいとおもいました。

でも、うれしかったです。

いそいでいえにかえりました。

いえにかえって、すぐ、おかあさんに、

「だっこがしゅくだいにでたんよ。しゅくだいじゃけえ、だっこして」

と小さいこえでいいました。

おかあさんは「へえ、だっこのしゅくだいでたん?」とびっくりしました。

でも、すぐ「いいよ」とにっこりしていってくれました。

おかあさんはすわって、ぼくをひざにのせて、りょう手できゅうっとだきしめてくれました。

おかあさんのからだはぬくかったです。

だっこしてもらっていたら、ぼくのからだもぬくくなりました。

ぼくが「おうちの人みんなにだっこしてもらわんといけん」といったら、

おかあさんがちっちゃいばあちゃんに「だっこしてやって」といってくれました。

ちっちゃいばあちゃんはわらって「おいで」といって、だっこしてくれました。

そして、「大きゅうなったねぇ」といってくれました。

つぎは大きいばあちゃんにだっこしてもらいました。

大きいばあちゃんはぼくをだっこして「おもとうなったのう」といってくれました。

さいごはおとうさんでした。

おとうさんはいきなりりょう手でぼくのからだをもちあげて、どうあげをしてくれました。

ぼくのからだはくうちゅうにふわっとうかんで、きもちよかったです。

おとうさんはぼくをゆっくりおろして、ぎゅっとだきしめてくれました。

おとうさんのからだはぬくかったです。

ぼくはまたしてもらいたいとおもいました。

だっこのしゅくだいがでたから、かぞくみんなにだっこしてもらいました。

さいしょははずかしかったけど、きもちよかったです。

だっこのしゅくだい、またでたらいいなとおもいました。


引用元: (孤独になる前に読んでおきたい10の物語 講談社)






友人のFacebookページで見つけた、こんなあったかいお話。

小学校一年生の子が書いた作文だそうだ。


平素なことばで綴られたまっさらな気持ちの丈が、清々しい。

「両手」ではなく「りょう手」と書いてあると、その手の体温まで伝わってくるような優しさを感じるのは、なぜだろう。

「ぬくかったです」「おもとうなったのう」...方言が伝える、柔らかい愛情。



そして、このしゅくだいを出した先生。
素晴らしい教育者だと思った。



「ハグ」という習慣のない、日本の文化。

たった7歳そこらの男の子が、
それをもう「なんか、はずかしい」と表現している。

でも、信頼する人の腕に抱かれて得る心の安定は、計り知れないものだ。
それは、幼い子供に限ったことではないように思う。

私だって、めちゃくちゃ疲れていたり凹んだりした時には
自分から「I need a hug。。。」とお願いして、相棒に元気をもらうことがある。

落ち込んでいる友達には「You need a hug」と言って、相手を腕に抱く。

でもそれは、女友達のあいだでよく見られる光景で、
男性同士の場合は少し事情が違うかも。。。


アメリカであっても、「ハグ」の男女差は明らかに存在する。

やり方も違うし(女性同士の場合はぎゅぅ〜っ、男性同士の場合は軽くパンっという感じ)
頻度も女性のほうが圧倒的に多いだろう。


親子のあいだでもそれは変わらず

父親と息子のハグというのは、
ある限られた状況の時にしか発生しない感がある。 

(卒業式などのお祝いイベントとか、しばしのお別れになる時とか)




この作文を読んで、思ってしまった。

私は息子を充分にハグしていただろうか、と。





初めて出会った時にすでにティーンエージャーだった息子は、父親とはもはやスキンシップは殆ど持たない年齢に達しており
私は、夫と息子がお互いをハグしているところを
おそらく数えるほどしか見たことがない。

息子をハグする回数は、夫より私のほうがもちろん多かったのだが

それでも毎日毎日ハグしていたわけではない。


女の子なら頻繁に経験するだろう 友達同士のハグも
男の子同士では、その機会はあまり無かったことだろう。


もっと腕に抱いてやればよかったと思った。10代という多感な時期に。






年を重ねるほど、大人になるほど

信頼する人の腕に抱かれ、ぬくもりを受け取るチャンスの少ない
男性のほうが

「だっこ」を渇望する気持ちは もしかしたら強いかもしれない。



この男の子のように

「なんかはずかしい」と思って
普段は口に出来ないだけなのかもしれない。


そして「だっこのしゅくだい、またでたらいいな」と思うのかもしれない。






女性である自分がリードをとって、愛する人に腕をのばそう。


小学校一年生の作文を読んでふとそう思ったことだった。




今日これを読んで下さった女性の皆さんも

たまには、近くにいる大切な人を

「だっこ」されてみてはいかがだろうか。












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Posted by レニア at 08:22│Comments(6)ふと思うこと

この記事へのコメント

なんて素敵な記事でしょうか。

心がほわっと暖かくなりました。

私もギューとされるのは大好きです。

身体が離れると、自然と気持ちも離れて行ってしまう気がいつもしています。

それを繋ぎとめるためにも、ハグは重要ですね。

日本人は本当に限られた相手としか、ハグをしませんが、アメリカでも男女でそんなに差があるんですね。
知りませんでした。

今日も素敵な記事をありがとうございました。
Posted by 幸 at 2013年07月03日 09:54
幸さん、

こちらこそ、いつも読んで下さってありがとうございます。

私が居た頃は「ハグ」というカタカナ語も無かったように思います。日本でも、触れ合って相手に愛情を伝えるということがどんどん重視されてきている証なのでしょうね。

ギュッとされるとホッとしますよね。
世界中の夫婦や親子が、いつもギュッ、ぎゅぅ〜〜っとやっていて「大好きだよ」と相手に伝えていたら、おそらくこの世からいじめや紛争はなくなるのでは?と思います。
幸さんも大切な旦那さまやお子さんをぎゅぎゅぎゅ〜っと抱きしめて今日もホンワカ温かくいてくださいね(季節柄ちょっと暑いかな?笑)
Posted by レニアレニア at 2013年07月04日 03:42
レニア様
いつも楽しみ読ませさて頂いております。

いいですよね、ハグ。

長男が、小一の頃には この「だっこの宿題」があった記憶があります。

中一になった息子に最近少々口うるさくなってしまっている自分に
少々反省しなければと・・・。

久々に長男を抱っこは無理でもハグしてみようかなと思いました。

小二の次男坊は、嫁が毎日抱っこしているので 今日は僕も仲間に
いれてもらおうと思います。

いつも素敵な内容をありがとうございます。
Posted by はち at 2013年07月05日 12:59
はち様、

ご長男さんが小一の頃には実際にこの「だっこの宿題」があったのですね!素敵ですね。
もしかしたら教師の会合/集まりなどでこの宿題のことが話題になることもあるのかもしれません。これを知った先生方が自分の生徒にも出してみようかなと思われて、こうした宿題が全国に広がれば、いずれはそれが世の中の大きな変化に繋がってゆくかも。。。なんて考えてしまいます。子供は未来ですものね。

今では中一のご長男さんをハグできるはちお父さん、素晴らしいです。
世代でしょうか。私は父に抱っこされた記憶は本当に幼児の頃を除いて全くありません。私達の親世代に比べると、今は日本でも子供との時間やふれあいを大事に思うお父さんが格段に増えたように思います。

はちさんご夫妻のように愛情をしっかり伝えながら育まれた息子さんたちは、やがて同じように子供に愛情を伝える優しいお父さんになられることと思います。これからどんどん成長される息子さんたち、時にはハグしたりいずれはただ肩を抱くだけになっても、いつまでも愛情を伝え合える素敵な親子でいらして下さいね。こちらこそ素敵なコメントありがとうございました。
Posted by レニアレニア at 2013年07月06日 03:07
ハグって、優しくて、あったかくて、ホッとして・・・
本当に素敵な習慣ですよね。

大好きな絵本『LOVE YOU FOEVER』のストーリーを思い出しました。こちらも、とてもあたたかい「だっこ」のお話です。

レニアさんは読まれたことがありますか^^?
Posted by hanon at 2013年07月10日 17:57
hanonさん、

『LOVE YOU FOREVER』のお話は知りませんでした。hanonさんのコメントを頂いて少しググってみましたが、ベストセラーの絵本なんですね。今度本屋で探して読んでみたいと思います。

ハグって本当にホッとする習慣ですよね。こちらに長くいると知らぬ間にそれに慣れてしまって、たまに帰国した時に家族や友人を無意識にハグしてしまいそうになる時があります(笑)。特に終戦前生まれの両親をびっくりさせないように気をつけなきゃ〜って自制する時があります。(^^;)
Posted by レニアレニア at 2013年07月15日 07:15
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