新しい生活

レニア

2012年11月12日 09:43

オバマ大統領が再選された。

その日はオフィスで仕事をしながらも、廊下を行き交う学生たちがしきりに
「オバマ」「ロムニー」という名を口にしているのがよく聞こえた。
アメリカは広い。
同じ国内なのに、西海岸に住む私たちとニューヨークなど東に住む人たちとの時差は3時間もある。
こちらがまだ午後になったばかりのころ、東の方での開票状況ニュースがすでに入り始めた。

A:○○州ではコンピューター投票に誤作動が生じて、オバマを選んだ人の票が全部ロムニーにいっちゃったんだってよ!
B:えーありえない!!それって陰謀じゃないの?


なんて興奮する声が聞こえる。(本当かどうかは定かでないが)
シアトルは圧倒的にオバマ派が多い。


引っ越しのあれこれが全て終わって、ようやくホッと一息ついている。

前に家に住み始めたときも、ちょうど大統領選だった。4年前の11月だ。

私には選挙権が無い。
アメリカに永住しているが、アメリカ人ではないから。
私の国籍はまだ日本で、日本のパスポートを所有する日本人だからだ。
4年前の大統領選の時は、そんな私を夫が投票所へ連れていってくれた。
受付けの人に「妻も一緒にいいですか」と尋ねたら快く中へ入れてくれ、私はアメリカに住むようになって初めて投票所に足を踏み入れた。そして夫が投票するのを横で見ていた。


あれから4年。


そして今回も同じ大統領が選ばれたが、私にとっては4年前とは様々なことが変わっていた。
夫、私、16歳のマイケルの3人だった暮らしは
夫、私、ネコ2匹の暮らしとなった。
今では20歳のマイケルは、自分の職場の近くに安くで住めるシェアハウスを見つけ
1週間まえにそこへ越して行った。
私と夫は、段ボールの積まれた新居で、マイケルの部屋が無い家で
新しい生活を始めることとあいなった。




シアトル市のずっと北部の郊外に暮らしていたが、そこから高速で30分程シアトル寄りに移った私たち。

新居へ移動する際、車の中で泣いて泣いて、、、困り果てたのがこいつ、キキである。

この8月の失踪事件。
あのとき、ようやくキキを発見したあの夜に聞いたのと同じ「助けてよぉ〜〜、にゃあ〜〜ごぉ〜〜〜」の悲痛な声で鳴き続けたキキ。
キャリアーを私のヒザに乗せ、車中ずっと話しかけたが
よっぽど怖かったのだろう。





一方、冒険心旺盛で困ったのがこいつ。
車の中ではマイケルに見ててもらったが、キャリアーから外へ出たがって暴れて暴れて、、、
それが新居に到着した途端、コロリとご機嫌。
持ち前の好奇心を抑えきれず、ランラランララ〜ン♪ とスキップしながら歩き回り
家の隅々までチェック。あらゆる所へ入り込んでいったやんちゃ娘である。

「あれ?ココがいないよ」と探すと洗濯機の後ろの狭ーい隙間にちょこんと座ってた
なんてこともあった。
(入ったはいいが出られなかったらしい。それでも助けを呼んで鳴くわけでもなく)

怯えて そろりそろり。。。
何もかも警戒しながら慎重に歩くキキとは対照的だった。




リビングの窓からは秋真っ盛りの紅葉が見られた。

新居をここに決めた理由のひとつは、実はこの木々。

私は道を歩いていても美しい木を目にすると下からほれぼれ見上げてしまうほど木が好きで、その近くに居ると何かエネルギーをもらえる感覚さえ覚える。
そんな私にとってリビングからのこの眺めはたまらない。


もうひとつは、これ。

前の住居にも暖炉はあったが、スイッチひとつで点火されるガス様式のニセ暖炉だった。
が、今回のは薪をくべる正真正銘の本物。
本物の暖炉がある家に住むのは、実は生まれて初めてだ。


灰の掃除をしたりと手間はかかるが、
薪の燃えるにおい、パチパチパチという音。。。
ガス暖炉では到底味わえない雰囲気がある。



クタクタに疲れて仕事から帰宅して

「まあまあ、まずは一杯。今日もおつかれさん。」と

相方とこの炎の前で酌み交わすビールの味は、格別だ。


こうして毎日を積み重ねて、また4年が過ぎるだろう。

オバマ大統領が今回の任期を終える4年後の私は、今日の私がまだ知らないことを
何かひとつでも学んで進化した私であるだろうか。(そう期待するが)


変わらず健康で、こうしてビールを飲んでいられるだろうか。


これから何年もが過ぎ去り、よぼよぼのばあちゃんになるまで生きられたとして
日本までの10時間のフライトに体が耐えられ、故郷へ帰れる身でいられるのは
何歳までだろう。


新居の窓から紅葉を眺め、そんなことをふと考えてしまう。

秋のせいかもしれない。








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