だっこのしゅくだい

レニア

2013年07月03日 08:22

「だっこのしゅくだい」


せんせいが、「きょうのしゅくだいは、だっこです。

おうちの人みんなにだっこしてもらってね」といいました。

ぼくもみんなも「ええーっ」とびっくりしました。

だって、だっこのしゅくだいなんて、はじめてだからです。

なんかはずかしいとおもいました。

でも、うれしかったです。

いそいでいえにかえりました。

いえにかえって、すぐ、おかあさんに、

「だっこがしゅくだいにでたんよ。しゅくだいじゃけえ、だっこして」

と小さいこえでいいました。

おかあさんは「へえ、だっこのしゅくだいでたん?」とびっくりしました。

でも、すぐ「いいよ」とにっこりしていってくれました。

おかあさんはすわって、ぼくをひざにのせて、りょう手できゅうっとだきしめてくれました。

おかあさんのからだはぬくかったです。

だっこしてもらっていたら、ぼくのからだもぬくくなりました。

ぼくが「おうちの人みんなにだっこしてもらわんといけん」といったら、

おかあさんがちっちゃいばあちゃんに「だっこしてやって」といってくれました。

ちっちゃいばあちゃんはわらって「おいで」といって、だっこしてくれました。

そして、「大きゅうなったねぇ」といってくれました。

つぎは大きいばあちゃんにだっこしてもらいました。

大きいばあちゃんはぼくをだっこして「おもとうなったのう」といってくれました。

さいごはおとうさんでした。

おとうさんはいきなりりょう手でぼくのからだをもちあげて、どうあげをしてくれました。

ぼくのからだはくうちゅうにふわっとうかんで、きもちよかったです。

おとうさんはぼくをゆっくりおろして、ぎゅっとだきしめてくれました。

おとうさんのからだはぬくかったです。

ぼくはまたしてもらいたいとおもいました。

だっこのしゅくだいがでたから、かぞくみんなにだっこしてもらいました。

さいしょははずかしかったけど、きもちよかったです。

だっこのしゅくだい、またでたらいいなとおもいました。


引用元: (孤独になる前に読んでおきたい10の物語 講談社)






友人のFacebookページで見つけた、こんなあったかいお話。

小学校一年生の子が書いた作文だそうだ。


平素なことばで綴られたまっさらな気持ちの丈が、清々しい。

「両手」ではなく「りょう手」と書いてあると、その手の体温まで伝わってくるような優しさを感じるのは、なぜだろう。

「ぬくかったです」「おもとうなったのう」...方言が伝える、柔らかい愛情。



そして、このしゅくだいを出した先生。
素晴らしい教育者だと思った。



「ハグ」という習慣のない、日本の文化。

たった7歳そこらの男の子が、
それをもう「なんか、はずかしい」と表現している。

でも、信頼する人の腕に抱かれて得る心の安定は、計り知れないものだ。
それは、幼い子供に限ったことではないように思う。

私だって、めちゃくちゃ疲れていたり凹んだりした時には
自分から「I need a hug。。。」とお願いして、相棒に元気をもらうことがある。

落ち込んでいる友達には「You need a hug」と言って、相手を腕に抱く。

でもそれは、女友達のあいだでよく見られる光景で、
男性同士の場合は少し事情が違うかも。。。


アメリカであっても、「ハグ」の男女差は明らかに存在する。

やり方も違うし(女性同士の場合はぎゅぅ〜っ、男性同士の場合は軽くパンっという感じ)
頻度も女性のほうが圧倒的に多いだろう。


親子のあいだでもそれは変わらず

父親と息子のハグというのは、
ある限られた状況の時にしか発生しない感がある。 

(卒業式などのお祝いイベントとか、しばしのお別れになる時とか)




この作文を読んで、思ってしまった。

私は息子を充分にハグしていただろうか、と。





初めて出会った時にすでにティーンエージャーだった息子は、父親とはもはやスキンシップは殆ど持たない年齢に達しており
私は、夫と息子がお互いをハグしているところを
おそらく数えるほどしか見たことがない。

息子をハグする回数は、夫より私のほうがもちろん多かったのだが

それでも毎日毎日ハグしていたわけではない。


女の子なら頻繁に経験するだろう 友達同士のハグも
男の子同士では、その機会はあまり無かったことだろう。


もっと腕に抱いてやればよかったと思った。10代という多感な時期に。






年を重ねるほど、大人になるほど

信頼する人の腕に抱かれ、ぬくもりを受け取るチャンスの少ない
男性のほうが

「だっこ」を渇望する気持ちは もしかしたら強いかもしれない。



この男の子のように

「なんかはずかしい」と思って
普段は口に出来ないだけなのかもしれない。


そして「だっこのしゅくだい、またでたらいいな」と思うのかもしれない。






女性である自分がリードをとって、愛する人に腕をのばそう。


小学校一年生の作文を読んでふとそう思ったことだった。




今日これを読んで下さった女性の皆さんも

たまには、近くにいる大切な人を

「だっこ」されてみてはいかがだろうか。











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