「だっこのしゅくだい」
せんせいが、「きょうのしゅくだいは、だっこです。
おうちの人みんなにだっこしてもらってね」といいました。
ぼくもみんなも「ええーっ」とびっくりしました。
だって、だっこのしゅくだいなんて、はじめてだからです。
なんかはずかしいとおもいました。
でも、うれしかったです。
いそいでいえにかえりました。
いえにかえって、すぐ、おかあさんに、
「だっこがしゅくだいにでたんよ。しゅくだいじゃけえ、だっこして」
と小さいこえでいいました。
おかあさんは「へえ、だっこのしゅくだいでたん?」とびっくりしました。
でも、すぐ「いいよ」とにっこりしていってくれました。
おかあさんはすわって、ぼくをひざにのせて、りょう手できゅうっとだきしめてくれました。
おかあさんのからだはぬくかったです。
だっこしてもらっていたら、ぼくのからだもぬくくなりました。
ぼくが「おうちの人みんなにだっこしてもらわんといけん」といったら、
おかあさんがちっちゃいばあちゃんに「だっこしてやって」といってくれました。
ちっちゃいばあちゃんはわらって「おいで」といって、だっこしてくれました。
そして、「大きゅうなったねぇ」といってくれました。
つぎは大きいばあちゃんにだっこしてもらいました。
大きいばあちゃんはぼくをだっこして「おもとうなったのう」といってくれました。
さいごはおとうさんでした。
おとうさんはいきなりりょう手でぼくのからだをもちあげて、どうあげをしてくれました。
ぼくのからだはくうちゅうにふわっとうかんで、きもちよかったです。
おとうさんはぼくをゆっくりおろして、ぎゅっとだきしめてくれました。
おとうさんのからだはぬくかったです。
ぼくはまたしてもらいたいとおもいました。
だっこのしゅくだいがでたから、かぞくみんなにだっこしてもらいました。
さいしょははずかしかったけど、きもちよかったです。
だっこのしゅくだい、またでたらいいなとおもいました。
引用元: (孤独になる前に読んでおきたい10の物語 講談社)
友人のFacebookページで見つけた、こんなあったかいお話。
小学校一年生の子が書いた作文だそうだ。
平素なことばで綴られたまっさらな気持ちの丈が、清々しい。
「両手」ではなく「りょう手」と書いてあると、その手の体温まで伝わってくるような優しさを感じるのは、なぜだろう。
「ぬくかったです」「おもとうなったのう」...方言が伝える、柔らかい愛情。
そして、このしゅくだいを出した先生。
素晴らしい教育者だと思った。
「ハグ」という習慣のない、日本の文化。
たった7歳そこらの男の子が、
それをもう「なんか、はずかしい」と表現している。
でも、信頼する人の腕に抱かれて得る心の安定は、計り知れないものだ。
それは、幼い子供に限ったことではないように思う。
私だって、めちゃくちゃ疲れていたり凹んだりした時には
自分から「I need a hug。。。」とお願いして、相棒に元気をもらうことがある。
落ち込んでいる友達には「You need a hug」と言って、相手を腕に抱く。
でもそれは、女友達のあいだでよく見られる光景で、
男性同士の場合は少し事情が違うかも。。。
アメリカであっても、「ハグ」の男女差は明らかに存在する。
やり方も違うし(女性同士の場合はぎゅぅ〜っ、男性同士の場合は軽くパンっという感じ)
頻度も女性のほうが圧倒的に多いだろう。
親子のあいだでもそれは変わらず
父親と息子のハグというのは、
ある限られた状況の時にしか発生しない感がある。
(卒業式などのお祝いイベントとか、しばしのお別れになる時とか)
この作文を読んで、思ってしまった。
私は息子を充分にハグしていただろうか、と。
初めて出会った時にすでにティーンエージャーだった息子は、父親とはもはやスキンシップは殆ど持たない年齢に達しており
私は、夫と息子がお互いをハグしているところを
おそらく数えるほどしか見たことがない。
息子をハグする回数は、夫より私のほうがもちろん多かったのだが
それでも毎日毎日ハグしていたわけではない。
女の子なら頻繁に経験するだろう 友達同士のハグも
男の子同士では、その機会はあまり無かったことだろう。
もっと腕に抱いてやればよかったと思った。10代という多感な時期に。
年を重ねるほど、大人になるほど
信頼する人の腕に抱かれ、ぬくもりを受け取るチャンスの少ない
男性のほうが
「だっこ」を渇望する気持ちは もしかしたら強いかもしれない。
この男の子のように
「なんかはずかしい」と思って
普段は口に出来ないだけなのかもしれない。
そして「だっこのしゅくだい、またでたらいいな」と思うのかもしれない。
女性である自分がリードをとって、愛する人に腕をのばそう。
小学校一年生の作文を読んでふとそう思ったことだった。
今日これを読んで下さった女性の皆さんも
たまには、近くにいる大切な人を
「だっこ」されてみてはいかがだろうか。