ああ無情

レニア

2012年07月02日 05:59

ああ無情 「レ・ミゼラブル」

19世紀に書かれたフランス文学。



貧しさから、たった1本のパンを盗んだだけで19年も刑務所に入れられた主人公
ジャン・バルジャン

拷問のような労働を19年も強いられ、人間として扱ってもらえず
人への信頼、愛を完全に失って刑務所から出てきた主人公

その彼が、ある司教の優しさにふれ「正直な人間になろう」と心を入れ替え
さまざまな人と出会い、助け
人生を終えるまでの物語。


そのミュージカルがシアトルにやってきたので、見に行ってきた。






夫がケガをしてから、コンサート、結婚式、友人の誕生日パーティなど
どれもキャンセルして、全く外出していなかった。

何ヶ月もまえにチケットを買ったこのミュージカルも当然キャンセル、、、と思っていたら

「行く」

どうしても見たい、
どうしても行くという相方

出がけに強い痛み止めを飲んで、久しぶりのお出かけとあいなった。



「ああ無情」といえば、子供の頃に読んだこの一節がとても印象に残っている。

刑務所から出てきたばかりのジャン・バルジャン
どこにいっても「犯罪者」として扱われ、食べ物も寝る場所も見つからない。
そんな彼を「どうぞお入んなさい」と温かく受け入れ、ベッドと食事を提供してくれた
ミリエル司教。

心のすさんだジャン・バルジャンは
そんな司教の教会からさえも、銀食器を盗み出し
翌朝逃亡。。。警察に捕まり司教のもとに連れ戻される。
「この男が、この銀食器は司教がプレゼントしてくれたものだと言うのですが本当ですか?」

司教は
「もちろんです。しかも私はこの2本のろうそく立ても彼にあげたのに、彼はそれを置き忘れて出て行ったのです。ほら、おまえ、このろうそく立てもあげたではないか。持っていきなさい」と
ジャン・バルジャンの前に、豪華なシルバーのろうそく立てを2本差し出す。

ジャン・バルジャンは涙にうちひしがれ、これからは正直な人間として生きてゆこうと
心に誓う。




許すことの大切さ、
そして人間は過ちを犯してもやり直しがきくのだということを子供に教えるのに
教科書などでもよく引用される一節のようだ。


物語では、ジャン・バルジャンは結局司教にもらったこのろうそく立てを売ってお金にすることは生涯なかった。

舞台のラストシーンでは
ジャンはそのろうそくのともすほのかな灯りに照らされて、静かにその一生を終えてゆく。





人間への不信感、人生への絶望を
過去に葬り去り
人生を180度転換させてまた自分を信じて、自尊心を持って生きてゆく。

それが実際にはどんなに難しくどんなに時間のかかる作業か

これを読んだ小学生当時の私には知る由もなかったけど
大人になった今だからこそ、ずんずん心に響いてくる。


素晴らしい舞台だった。





こうして「本物」に触れるとき、なぜか私はいつも亡くなった祖母のことを思い出す。
涙があふれてあふれて止まらなかった。


悲しみの涙じゃなくて、感動の涙を流すという行為は

ホントに、こころの浄化ですね。。。



幼い娘コゼットを育てるため、売春婦にまで落ちぶれたファンティーヌが
絶望の淵で歌う  「I Dreamed A Dream」

http://www.youtube.com/watch?v=2wfR0y9qg90

鳥肌がたつ。。。






レ・ミゼラブルの映画版が、今年の年末リリースされるそうだ。


もし機会があったら、ぜひ映画館まで
足を運んでみてください。




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